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小野寺 香那恵  /  ONODERA Kanae

あのときの光と影の痕

2016.6.

私たちが目にしているこの世界は光と影で成り立っている。
どちらが欠けてもその姿らしきものは認識できないし、
そのどちらも絶妙なバランスで成り立っている。
光は影によって光にされるしまた逆も然りで、どちらかはそのかたちとなってただそこに存在する。
それはどちらがいいとか悪いではなく、どちらも互いの存在によってそこに在るのだ。

光の存在と影の存在というものがあるとすれば、私は確実に影の人間だと感じて生きてきた。
小さい頃から特別な才能もなく何をやってもうまくできなかった私。
そんな私に弟ができ、彼は私にとってみんなの注目を集める羨ましくてしょうがない「光の存在」だった。
家族は弟の存在に夢中になった。幼い私はそこに存在していていいのかわからなくなった。
そんな中で父が弟を写そうと買ったカメラが忘れられたように置いてあるのを見つけた。
好きだった本に載っていた写真を真似して撮ってみる。
そんな唯一の場所であった写真を、普段なかなか褒めてくれない母が褒めてくれた。

そこから写真を撮り続けさえすればいつか自分も光の存在になれると信じて無我夢中で写真を撮った。
しかしながら自分は自分でしかなくその自分にも光と影は存在し
またそれはおそらく自分が光だと見ているものの中にも同じように存在している。
写真を撮り続け人生を続ける中でそんなことを思うようになった。

光を探し続け暗闇の世界に光が差し込む、もしくは存在自体が光になることを待ち望んでいたけれど
この影であるはずの世界にも光は存在すること。
時に影や闇は色々なものを見せてくれて、それはギフトにもなり得ること。
そしてこの世界は美しいものであること。
その痕であるような写真たちはそんなことを教えてくれた。

それは必要としてそこにある。
それがただ痕を残していく。
それは今を形成する必要な痕だった。

これからも
ただただそこにある光と影の痕が残っていくのだろう。
あのときと同じように。

○作品仕様

 

プリント:デジタルCプリント、インクジェット・プリント
印画紙種類:RCペーパー、エプソン プロフェッショナルペーパー光沢
印画紙サイズ:B1、A1、A2、A3
作品点数:28点

プロフィール

1979年 宮城県多賀城市生まれ
1995年 銀色夏生に影響を受け写真を始める
2000年 バンタンデザイン研究所フォトグラフィ科卒業
2013年 カハデルフゲテフォトスタジオオープン

主な出展、作品展

2015年2月

TCR写真展 メリラボ 仙台市
2016年1月

集団仙台写真展 仙台メディアテーク 仙台市
2016年1月

TCR写真展 メリラボ 仙台市
2016年2月

 Sha-gaku vol.10  カロス・ギャラリー

形式は、グループ展

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